合併症

循環の欠如: 四肢に循環がないことが確認されたとしても、これが直接に生命を脅かすことはほとんどありません。筋壊死に至るには、循環を失ってから最大6時間を要します。循環の回復が早ければ早いほど組織のダメージを最小限に抑エラーれます。循環の回復は、骨折、または脱臼箇所を正常な位置に整復し、血管の蛇行を整復します。

急性コンパートメント症候群: ACSは、筋区画の内圧上昇により循環障害と組織の機能障害を発症します。ACSは、早期の診断と管理を怠ると、深刻な病態へと発展します。筋区画の内圧上昇が閾値に達すると、微小循環が組織の代謝需要に対応できなくなり、虚血性壊死に至ります。

ACSが認識されたら筋膜切開を行い、次のような合併症を回避します:

  • 神経障害
  • 虚血性拘縮
  • 感染
  • クラッシュ症候群
  • 切断
  • 死亡

病院前環境でのACSの臨床診断が非常に難しくなります。 ACSには次のような兆候または症状があります:

  • けがの程度に見合わないほどの激痛
  • 他動運動での痛み
  • 硬くなるほどの腫脹

最終的な徴候:

  • 知覚異常
  • 不全麻痺
  • 脈欠損

ACSの初期診断では、臨床所見に見合わない激痛、区画内の筋肉を他動的に伸展した際の痛み、知覚異常、運動障害が特徴的な症状として挙げられます(Elliot & Johnstone、2003)。

ACSの初期診断は非常に難しいため、常に疑いをもって処置に当たります。

処置では、適切な蘇生、鎮痛を行い、圧迫の原因となっている因子を除去し、早急に救急医療部門へ搬送します。適切な医療機関へいち早く搬送して、評価、観察、内圧のモニタリング、必要であれば筋膜切開を行います。

病態が進行していても、(筋力の低下に伴わず)遠位の脈が触れることがよくあります。四肢の筋力低下、および、麻痺も、進行期(初期ではなく)の徴候です。外傷の程度に見合わない激痛、および、受動伸展時痛の増加など、外傷の発生状況と状態に基づいて、ACSの疑いを常に考慮します。

神経損傷: 例えば、腓骨の頚部骨折のような骨折や外傷では、総腓骨神経、深腓骨神経、表腓骨神経を損傷することがあります。深腓骨神経が損傷すると、足首と足指の背屈が弱くなり、第1/2窩の感覚が鈍くなります。表在性腓骨神経が損傷すると、足首の外転が弱くなり、足の外側背部の感覚に変化が生じます。特に骨折や脱臼の整復の前後には、四肢の神経学的状態(運動と感覚)を評価することが重要です。

脱臼した関節の近くでは、神経損傷のリスクが高くなります。