神経心理学的(コンピュータ支援)検査の役割

CogSport®、 ImPACT®やHeadMinder™などのシステムを用いたコンピュータ支援の神経心理学的検査は、脳振盪の診断と管理において必要不可欠なわけではありません。これらのシステムは、多面的評価の一つの要素である、認知機能の測定に使われています。そして脳振盪の臨床診断の補助として、多面的評価が推奨されています。


これらのシステムはしばしば、プロスポーツチームによってSCAT6©と併せて用いられます。プロのチームがコンピュータ支援の神経心理学的検査を使用する際は、ベースラインテストを補助として用いていますが、従来から、ベースラインテストはコミュニティの設定では入手できないのが実情です。

認知機能の回復は、症状消失の時間的経過と大きく重複することが知られていますが、通常は症状の消失後に続きます。そのため、コンピューター化されたシステムによるSCAT6©を用いた一連の認知機能評価が脳振盪の管理において採用されています。

2010年Makdissi らは、認知機能の回復と症状消失を比較した際に、認知機能の回復が遅れて起きることを確認しました。この研究のデータによれば、脳振盪を起こしたアスリートの35%において、症状消失後2-3日に渡って、コンピュータ支援検査では障害が持続したことが確認されています。

Makdissiの研究はありますが、しかしながら神経心理学的検査だけに依存して回復や競技復帰の決断をすることは推奨されません。EchlinとBroglio両者の各研究によれば、脳振盪の診断を受け、症状が持続している症例のうち38%までが正常な神経心理学的検査の結果が出ていることが確認されました。

要約すれば、コンピュータ支援の神経心理学的検査だけに依存して、競技への復帰を決定することは推奨されません。神経心理学的検査は、受けることができる状況においては、症状チェックリストと平衡機能検査と併用し、臨床判断の補助として活用するべきでしょう。