ゲームを通じたコーチング

改良を加えたゲームは、プレーヤーのスキルと競技に対する理解の両方を向上させるために非常に有効です。すべてのプレーヤーを伸ばすために、コーチは、ゲームベースのアプローチをコーチングアクティビティに用いて、アクティビティを管理する(例えば、解説してしまう)のではなく、ゲームを通して実際にコーチングする(具体的なポイントに焦点を合わせ、観察および批評的に分析し、ミスを修正し、良い点を評価し、学習を促す)ようにする必要があります。これは、最初に設定した目標に関連して、良い点と伸ばすべき点の両方について具体的なフィードバックを行うことを意味します。

コーチは、セッションを通して焦点や目的(例えば、タックル技術)をぶれずに維持していくことが重要です。コーチは、色々なミスを修正しようとしがちですが、一度に多くの細かい点にこだわり過ぎると、プレーヤーへの重要なメッセージが希薄になってしまうことがあります。スキルを扱いやすい要素(キーファクター)に分割すると、プレーヤーがポイントを吸収しやすくなります。1回または複数回のセッションで多くのキーファクターに焦点を当てることもできますが、コーチは一度に最大2、3個のキーファクターにしか焦点を当てないようにする必要があります。プレッシャーの中で選手が安定したパフォーマンスを発揮できるようになれば、コーチは難易度を上げてプレーヤーに新たな挑戦をさせることができます。

コーチは、ゲームを通じたコーチングをする場合、次のことを考える必要があります:

  • 練習の主な目的/目標は何か?
  • ゲームの中で、どんなスキルや戦術を身に付けさせたいのか?
  • これらの技術や戦術を強調するために、どのような改良/難易度アップができるのか?
  • プレーヤーが解決すべき主な問題は何か?
  • 学びを促すために問いかけるべき主な質問は何か?
  • すべてのプレーヤーを成長させるために、どのように難易度を上げ下げすればよいか?
  • 目的を達成したことを評価するためには、どのような採点方法がよいのか?
  • このアクティビティにおける境界線や安全のためのルールは何か?

セッションを構成する際のホール・パート・ホール法は、ゲームとスキル練習の両方を併用する上で非常に有効な方法です。この方法では、コーチはゲーム(ホール=全体)から始め、次にもっと練習が必要な特定の分野があれば、スキル(パート・部分)の練習を行い、その技術にさらに焦点を当てることができます。そして、その練習をゲームやアクティビティ(全体)に戻すことで、よりゲームに近い環境でプレーヤーに新たな挑戦をさせることができます。

すべてのプレーヤーを十分に成長させるために、どのセッションも徐々に難易度を上げながらも、時には必要に応じて難易度を下げることも検討してください。プレーヤーが望ましいレベルでアクティビティを行うことができていない場合、コーチはためらわずに難易度を一段下げて、以前に練習した内容に改めて焦点を合わせます。プレーヤーによって能力の差があるので、一律に扱うのではなく、個々の能力に適した目標を設定する必要があります。

対戦相手のいない状況では、そのプレーヤーにとってもパフォーマンスを発揮するためのプレッシャーがほとんどないため、スキルを生かしたり決断したりすることは非常に容易でしょう。しかし、これは、ゲームの状況下で同じレベルのパフォーマンスを発揮することができるという誤った印象を与えてしまいます。多くの場合、ゲームを改良することでパフォーマンスにプレッシャーを与えることがきます。最終的に、このことが実際の試合でスキルを生かす能力に影響します。

プレーヤーを現実的なトレーニングアクティビティに挑ませるために、プレーヤーに対して課題を設定し、その課題に対応し決断することを促すような工夫が必要です。アクティビティを計画する際には、以下の点を考慮し、プレーヤーに求めることを常にセッションの結果と関連付けるようにしましょう:

  • 攻撃または守備において、相手の人数を変えたり、できること・できないことの条件付けをしたり、あるいは、数名のプレーヤーに具体的な役割を与えるなどして、その場その場で決断する能力を身につけさせる
  • スコアリングゾーンとシステムの活用 ― つまり得点することのできるエリアと位置とその数、および、得点するために必要なこと ― 目標との関連性
  • 練習の効果を最大限にするために、プレーエリアの寸法を変更する(例:コンタクトスキルの練習では使用するスペースを狭くする)
  • 特定のゾーンで使ってよいスキルと使用禁止のスキルを設定する(例:ミドルゾーンでのパスは3回まで、自陣ではキック禁止など)